耳を澄ませば・・・オオトラツグミ
毎年、奄美大島全域でオオトラツグミの生息一斉調査を行っているようだ。
ようだ・・・と言うのは、これまでここでそういうことをしていることすら知らなかったから。
奄美野鳥の会の村田さんに誘われて初めて参加した。
「4時50分に油井岳展望台に集合してください」
「4時って・・・あ、朝ですか? 夕方じゃなくて、朝の4時?」
オオトラツグミは早起きな鳥なのだとか。
3月20日の当日、まだ暗い山道を登って集合場所に到着。しかし、誰も来ていない。
雨が降ったので延期になったかな? 湿度が高くて暖かいからハブを警戒したのかな?・・・などと、考えながら集合時間ぎりぎりまで待った。
諦めて帰るときにやっと気づいた。集合場所は高知山の駐車場ではなく、油井岳の駐車場だったと。
で、時間10分遅れで皆と合流。ざっと見て20人以上の人が集まっていた。
ビギナーなので、ベテランの村田さんに同行していくことになった。
僕を含めて素人3人を引き連れることになった村田さんは、私もまだまだ経験不足で・・・と困惑気味。
車で地蔵峠のポイントまで移動した。
まだ暗い道に降りてじっと耳を澄ます。
僕は足元にハブがいないかと目をこらす。
「あっ、今あっちの方から聞こえた」と、村田さんが書き取り用の図面を抱えながら右に顔を向けた。
オオトラツグミってなんて鳴くんだっけ。残る3人は「?」って感じで顔を見合わせた。
「あっ、また聞こえた・・・」
ピローーー(と、僕には聞こえた)と甲高い鳴き声がする。
次第に僕らの耳も慣れてきた。ここはオオトラツグミが多く生息する場所のようで、右2カ所、左1カ所、左後方1カ所と、最低でも4羽を確認できた。(合っているかな?)
大きく聞こえたり、小さく聞こえたり、場所が少しずれたり、というのは鳥が移動しながら鳴いている可能性が高いとのこと。
まだ夜も明けぬ朝早く、境界も定かではない黒い山を凝視してひたすら耳を澄ます。
こんな経験は初めてだった。
”耳を澄ます”という行為自体、ずいぶん久しぶりの感じがする。
6時を過ぎてから山が次第に賑やかになってきた。
アカヒゲ、ルリカケス、コノハズク、セキレイ、エトセトラ・・・(素人なので正体がよくわからない)あっちこっちで鳴きだした。山羊の鳴き声や遠く鶏の声も聞こえる。
目を閉じて、鳥の囀りを聴いていると、ふと、ラジオの「音の風景」を思い出した。
この音を聴いた人はどんな光景を想像するのだろうか?
調査を終えて、ふたたび集合場所へ戻った。
リーダーは、各ポイントで収集した情報を重ね合わせながら、オオトラツグミの生息エリアを地図に書き込んでいった。
僕はその間暇なので、駐車場周りを散策した。
意外なほど、きれいに手入れがされていた。植木はきちんと刈り込まれ、雑草もすべて刈り取られていた。
桜が少しだけ咲いていた。奄美在来種の寒緋桜はすでに咲き終えて葉っぱだけになっているが、この桜はこれからのようだ。
道の下にはヒカゲヘゴの群生も見える。
8時過ぎに一通りの作業を終えて、リーダーが、今日参加したことへのお礼と今後の野鳥の会の計画などを話して解散となった。
早起きして自然に接すると気持ちがいい。いい体験ができた。
また次の機会にも・・・今度はオオトラツグミより寝坊の鳥でいいけど。
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