アンパンマンの遺書
やなせたかし氏が亡くなった。漫画家として現役のまま94歳だった。
アンパンマンがテレビに登場してから25年、
アニメを夢中で見ていた僕の子どもたちもとうに二十歳を過ぎた。
アンパンマンは国民的ヒーローだ。
テレビで訃報を聞いて、ある本のことを思い出した。
1995年に発刊された「アンパンマンの遺書」だ。
奥さんに先立たれて「死」を身近に感じたやなせ氏が身辺整理のつもりで書いた自伝である。
「はじめに」の中で人生について氏が思うところが書かれている。
『戦後も五十年を経たが、ぼくの人生はまさに戦前、戦中、戦後を通過してきた。
いつ死んでもおかしくない激動の時代だった。ぼくはなんとか生きのびてきた。今は人生のオツリか、附録のようなものだ。しかし、附録が本誌より豪華ということもある。ぼくの附録は意外に良かった。
高位高官というのは望まないし、似合わない。雑草の暮しがいい。
それにしては恵まれていたと思う。日陰の細道の名もない雑草としては、ちいさな花を咲かせることが出来ただけで望外である。すべての点で人後に落ちるぼくにしては上出来と、自分で拍手している。
大部分はアンパンマンのおかげである。このキャラクターにめぐり逢えたことが幸運だった。
アンパンマンはぼくの子供であり、ぼく自身でもある。』
(やなせたかし著 「アンパンマンの遺書」より引用)
「なにが君のしあわせ なにをしてよろこぶ わからないままおわる そんなのはいやだ!
わすれないで夢を こぼさないで涙 だから君はとぶんだどこまでも ~♪」
子どもたちに夢と勇気を与え続けたやなせ氏をアンパンマンたちと一緒に見送ろう。
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