神隠し?
ペットのフクロモモンガを締め切った和室に放ってしばらく自由に遊ばせた。
障子の桟を伝って上に登ったり飛び降りたりと楽しそうに(?)しているが、いざケージに戻そうとすると激しく逃げ回った。
1日目は何とか捕まえて強制的にケージに戻した。
2日目は、追いかけまわすとストレスになるのではないかと思い、ケージの扉を開けたまま中に餌を置いて自然に戻るように仕向けて和室を締め切った。
翌朝、てっきりケージの中で眠っているものとばかり思っていたのに姿が見えない。
和室の中をくまなく探すがいる気配がしない。
餌に手をつけていないことに気づき、これはただ事ではないぞと焦った。
和室は締め切ったままなので、この部屋から外に出る可能性はない・・・はずだった。
どこかに隙間があるのかと隅々を調べると柱と柱をつなぐ長押になんとかもぐれそうな隙間があることがわかった。
しかしそこから先に進むほどのスペースはない。
クーラーから室外機に伸びるホース穴なら通れそうだ。
もしそこから落ちたとしたら壁の中か床下のはず。
もう他に探すところもないので、押し入れの布団類を一つ一つ出しながら調べてみた。
扉が開いていたわけではないのでもちろんいるはずはない。
和室と洋室を仕切る引き戸に少し隙間があるが、フクロモモンガの頭がそこを通るとは思えない。
思えないが、しかし、もう探すところがないので念のため家中を捜索してみた。
昔社宅に住んでいたときに逃げたハムスターが冷蔵庫の後ろで死んでいたことがあったので、最悪の事態を考えるともう泣きそうだった。
テレビなど音のするものを消して、ユーチューブからフクロモモンガの鳴き声を流しながら潜んでいそうなところを探してみた。
それにしても鳴くどころか動く気配すらしない。
気になって仕事が手につかない。その日渡す予定のイラストを夕方になってようやく送信した。
事情を知った娘も気になって落ち着かないから実家に戻って一緒に探すと言いだした。
少々疲れたので和室の隣りで座イスを倒して少し眠った。
そして起きたときに不思議な光景を見た。
扉の隙間をフクロモモンガが上下に激しく動く姿を見た。
大きさ、体色間違いなくフクロモモンガだった。
「いた! 和室にいる!」
女房にそう告げて保護する気まんまんで和室に入ると・・・
何もおらず、何かが動く気配もしない。
でも、確かに見たのでいるはずだと確信して隅々まで探したが見つからない。
それから1時間ほどして娘がやって来て一緒に探した。
動画の鳴き声を流しながら家中を探した。
これだけ探していないのは、ひょっとして外へ出たのでは?とも考えて懐中電灯で周辺を捜してもみた。
ついには、もう見つからないのでは?と不安にかられて3人とも黙りこくってしまった。
すると、娘が何かの音に気付いた。
カリカリと爪でひっかく音がするという。それは和室からだった。
耳を研ぎ澄ませてその音の元をたどると・・・壺だった。
「いた!」娘が声をあげた。
首の長いその壺をかしげながら懐中電灯を照らすと”目が合った”という。
僕が見た後で壺の中に入ってしまったのだろうか?
だが、助け出したフクロモモンガは自分のおしっこですっかり濡れていて衰弱していた。
すべって爪が立たないので自力で脱出できずにずいぶん体力を使ったのだろう。
床においた蜜にもまったく手をつけていないことなど考えると昨夜の早い段階で壺に落ちた可能性が高い。
かなり弱っていたのはそのせいだろう。
しかし、置物の隙間も壺の中も何度も見たはず。
どうして今まで見つけられなかったのだろう?
それに僕が見たものは何だったんだろう?(動きが速いなあとは思ったが)
娘が抱えて蜜を与え少しずつ元気をとりもどしていった。
ケージの中でのろのろではあるが餌を食べる様子を見て一安心した。
そして、みんな急にお腹がすいた。
可哀そうだが、自由にさせるのは当分お預けにしよう。
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