いくら下手でも
今年の年賀状は、添え書きを筆ペンで書いた。
客観的に見て下手な字だ。分かってる。
以前なら一枚書いてみて、「ああだめだ、ちゃんと練習してから書こう」と、すぐに断念した。
ふと気づいた。いや、本当はとっくに気づいていたことだが、「上手くなってから人前に出そう。」という考えは、ほぼ実を結ばないことを。
誰だって下手だとけなされるよりも、上手いと褒められるほうが気分が良い。
たしか徒然草にもそんなことが書かれていた。
踊りを習っている者がいて、宴の席で踊ってみよと言われたときに、素直に踊って未熟さを笑われる者は、その後ぐんぐん上達するが、同じように声を掛けられて、「まだまだ人様にお見せできるものではありません」と断り、しかし、心のうちで「今に上達して皆を感心させてやろう」と思っている者はその後さっぱり上手くならないものだと。(うろ覚えだけど・・・こんな感じ)
上手くなってから(いつか)書くか、それとも、上手くなるために今書くか。
そんなわけで、恥ずかしながら筆ペンを使い始めた。
次は宛名も書こうかとさえ思っている。
武者小路実篤の「人生は楽ではない。そこが面白い、としておく」という本の中で、実篤の絵について興味深いエピソードが紹介されている。
幼い娘が実篤の描く絵を見て、最初の頃は「お父様がまた炊きつけを増やしている」と揶揄していたが、3年ほど経ったある日、相変わらず一心に絵を描く実篤の姿をじっと見ながら、「いくら下手でも上手くなる」と言い残してどこかへ行ったいう。
なんだか元気づけられた。
だから、上達したいと思うことがあれば、その過程において人に笑われることを気にかけずにまっすぐ前を見て進んで行こう・・・なんてことを思っている。
ちょっと遅すぎた感はあるが・・・。
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