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2010年7月 1日 (木)

母がたずねて3000m

吉田拓郎のCDをボリュームを少し大きくして流しながら女房が掃除をしていたら、なんだか外で人の声がしたような・・・音を絞って耳を澄ますと、「ごめんください」と再び女性の助けを求めるようなか細い声。

びっくりして玄関を開けると母がベンチの上でぐったりと座っていた。

聞けば3㎞以上の道のりを歩いてきたらしい。炎天下のしかも山道もあって、70過ぎの病気がちな母にとっては大変な距離だったに違いない。

3000

一昨年に父が亡くなってからは独りで暮らしている。車で行けばすぐの距離なので毎日のように様子を見に行っているが、母が僕の家を訪ねてくることは滅多にない。タクシーに乗ったりとかできない人なのだ。

理由を聞くとガスコンロが急に使えなくなったとのことだった。困った母は僕に助けを求めるために歩いてきたのだった。実はガスコンロではなく、火の始末を心配した弟がIHヒーターに替えてあるのだが、母は”ガスコンロ”が電気で動いていることをよく忘れるのだ。

母を家に残してとりあえず実家に様子を見にいくと、台所周辺のブレーカーが落ちただけだった。運の悪いことに電話の電源もそこにあったので連絡ができなかったのだ。今後のために延長コードで電話の電源は隣室からとることにした。

「直ったのならもう帰る」という母を押しとどめてテレビを見せたりおしゃべりをして時間をかせぎ、その間に女房が手早く夕食を準備してその日は文字通り夕方の食事を一緒に食べた。

父がいなくなってから母の時間は止まったままだ。ふたりが過ごしたあの家を離れようとしない。昔から片付けが下手な母は几帳面な父を失い、紙屑や服が散乱した部屋で、しかし、仏壇に手を合わせながら落ち着いて暮している。

家まで送ったときにクーラーも効かなくなったというので、確かめてみるとリモコンのスイッチが暖房に入っていた。 そんなに時間がないのかもしれないなぁ・・・早く僕がちゃんとしないと。

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コメント

読ませていただきました。描かれた絵から、長い道のりを歩いてこられたお母さんのお気持ちを察することでした。
 私は最近ブログを始めましたが
読んでくださる方々へどんなことを書けばいいのか、ふと考えることがあります。
瀬戸内町にお住まいの貴方のブログ、「あま美の日常」の記事は私のよきお手本です。やがてはこのメルマの記事とマンガが本にできるといいですね。人を挽きつけるのは作者の温かいだと思います。

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