古仁屋大火の日だった
さっき突然サイレンが鳴った。
すわっ、火事か!と一瞬緊張して耳を済ませたが、サイレンはすぐに止んだ。
今日が昭和33年に起こった大火の日であることに気づいた。
僕が生まれる約2年前の出来事だ。
母はまだ父と結婚しておらず、その日古仁屋に新築したばかりの父の家を訪ねて来た。
当時父は母親と二人で住んでいて、その母親が今日はここに泊まっていきなさいと勧めるのを断って請阿室に戻ったそうだ。
その夜大火がおこった。
火元は父の家の近く(確か川沿いの市場通り辺り)だったとか。そのとき父は呼ばれて外出していたので急いで家に戻って母親を連れて逃げるのが精いっぱいだったという。
母と結婚して一緒に暮すはずだった新居は一夜にして灰になった。
それからの詳しいことは聞いていないが、その後父は借金を返すために出稼ぎに行っていたようだ。
小さい頃の僕は父を知らず母の実家で暮らしていた。
池地の浜ではしけの舟から降りた大人を指して「お父さんよ」と言われて戸惑ったことをなんとなく覚えている。
そのとき貰ったおもちゃの赤いピアノも記憶している。
そういえば、大火のことやその後のことを直接父に聞いたことはなかった。
もう亡くなってしまったので知る術はないが、借金して建てたばかりの家を大火で失ったのだからきっと苦労したのだろう。
それにしても、あれだけの災害で死者が出なかったのは奇跡的である。
いつかそんな話もマンガや絵本で描いてみたいと思う。
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